DOES 全曲解説
Wataru (Vo / Gt)


01. カリカチュアの夜

カリカチュアとは戯画、風刺画、誇張された絵。現代で言うところのマンガ、アニメだと思う。アニメやウェブに夢中になって、2次元的な感覚が当たり前になった現代をうまい言葉で表現できないかと考えてたら、この言葉に行きついた。イントロの歓声はそういう世の中を生きる人々の声をサンプリングで表現した。その中で演奏する架空のバンド。疑似世界。信じているものがすべて正しいものとは言えない、というテーマ。元々アルバムの1曲目に持ってこようとして作った曲で、イントロの単音ギターを思いついてから曲を広げていった。

ワンノート単音のイントロだからシンプルである意味平べったい感じがして、2次元っぽくなってる。かつシャッフル・ビートが効いていて、ノリのいい曲。シャッフルの曲だから逆にシャッフル聴き禁止w。歌詞の「騒げ騒げ、騒ぐ騒ぐ」や、「遊べ遊べ、遊ぶ遊ぶ」は子供の頃に知った狂言「附子」の「あおげあおげ、あおぐあおぐ」からのアイデア。響きとして面白いし、聴いてる人も口ずさみやすいかなと思った。狂言なんかは動きとかデフォルメされてて、アニメっぽいところもあるし。鳥獣戯画からもわかるように、日本人は昔から2次元化された絵を好むのかも。だから今では世界に誇るアニメーション大国なんだろう。MV作るならアートっぽいアニメが似合いそう。誰か作ってくれないかな。

2. 紅蓮

2013年の11月頃に作った曲。NARUTOの話があり、そのために書き下ろした。書き下ろしとはいえ、DOESらしさが出るように、エイトビートをふんだんに使った。アルバム制作におけるこの2年間はDOESとは何か、自分らしさとは何かを確認する作業でもあった。その中で偶然か必然かできたこの曲はそれが如実に出ている。アニメの影響が強いと思うけど、この感じはオレ達にしかできないと思っている。それをメンバーと確認し合うことで、より前に進めた。オレ達はDOESなんだ、って。NARUTOは以前から読んでいて好きな漫画。だから内容がわかるので歌詞にも反映させやすかった。愛があるからこそ生まれる光と影、その両者の戦いを描いていると捉えて詞を作った。紅蓮とは赤。赤とはハートや血の色である。赤いものが通っている人間ならば、今を見据えて未来を明るくすることができる。迷い、葛藤し、模索し、戦い、切り開く。たとえどこにもいけなくても、その行為自体が価値あるものだと思う。たとえ誰かになれなくても、自分になれたら、それが一番価値のある事だと思う。

3.

四季の中では一番春が好きである。山口百恵の秋桜に対抗して作った。というのはあながちウソでもなく、あの歌謡なメロディーとソウルは日本人ならではなもので、とてもクールなのである。そしてその感覚はオレの中にもある。そんな80’sな歌謡具合をシンプルなバンド感と混ぜた。もう一つのアレンジとしてリズムがちょっと明るいバージョンもあったけど、こっちのアレンジの方がミニマルで、桜の散る時の静謐を喚起させるような気がした。この曲自体を家で作った時は、「これはDOESでやらなくてもいいのかもしれないんじゃないか」とか考えたが、やっぱりこういう部分があるのがDOESなんだろうと思い直した。紅蓮のようなエイトビートで激しい曲との対極をなすような曲だけど、実は音自体はそんなに静かじゃない。そういう意味では、もしかしたらアルバムの中でも一番DOESらしい曲なのかも。静かなものを激しい音でやる。そんな逆説の中に生まれる言葉にできない感覚が好きだったりする。詞も一番気に入っている。情景描写と心象風景。夏が終わり、秋が過ぎて、冬を乗り越えて、また春が来る。繰り返す季節の中で想うこと、失っていくもの、変わらないもの、そばに居て欲しい人。大事にしていきたい曲の一つになった。

4. 殺伐とラブニア

去年からライブでもちょこちょこやってて、初期のハードコア的なエッセンスを盛り込んだ曲。作った時はメンバーの中でもシングル級だ!って勝手に盛り上がってたけど、そのあと紅蓮が出来ちゃったからな。ラブニア、というと造語みたいだけど、その通りの造語である。実際は英語表記で「Love, Near」である。愛するものが近くにある、それが故に殺伐としていく少年って感じかな。パラドックスであり、ジレンマであり、愛情でもある。そんなわけのわからない感情や行動を爆発させたいなんて思う人も少なくないはず。毒を食らわば皿まで。そんな気持ちで、見えない未来を切り裂こうとする。自分と世間の間で、もがき、抗う。とにかくその少年的なわけのわからない衝動をわけのわからない感じで表現したかった。ロックにしろパンクにしろ、そんなわけのわからない感情が重要な要素だから。わけのわかる安全なパイを割切りするのが好みなら、ロック・ミュージックは聴かない方がいいと思う。言う事ばかり聞くイヌの集まりはすなわち「居ぬ」の集まりである。攻撃的なのは好きである。同じくらい、平和なのも好きなんだけど。ニャー!

5. リリス

アルバム候補曲の中でも一番最後にできた曲。アレンジは全部自宅のPC上でやった。リリスとは夜の女の悪魔。男をたぶらかし、餌食にする。なんか怖い。でも男子ならば大抵、女子に誘惑されてみたいものである。ゲームやアニメの世界とかでもちょくちょく出てくる言葉、キャラ。エヴァンゲリオンにも出てくる。パズドラにも出てくる。アニメもゲームも好きなので。そんな何でもないところから曲や詞ののアイデアは生まれる。ギターの単弦弾きフレーズをLRダブルダブルで、って手法は最近の洋楽ファンならビリビリくるはず。音もオクターブ・ファズを入れていて、新しいサウンドメイクにこだわった。録音も楽しかった。ドラムなんか紙叩いてるし。詞はちょっと気が変な感じにした。興味がある事だけ好きで、何にでも影響を受けて、咀嚼し、血と肉にし、排泄し、土に帰り、芽が出て、花が咲いて、風に吹かれて、元が何かわからなくなって、忘れて、知らない音楽が鳴り、酒、女の子、上がるために落ちる、気が変になる、段々理論混沌矛盾。わけがわからないものはわけがわからないものでいいのだ。

6. 問題

普通はオケ(楽器演奏)から録って、歌を入れるんだけど、この曲は歌まで全部同時に録った。しかも、音のかぶりを避けるためにオレだけ録音ルームじゃなくてコントロール・ルーム(録った音を聴いたり、編集したりする部屋)にマイクを立てて、ギターを弾きながら歌った。レゲエな曲だし、テンポチェンジがあるし、生々しさを出したかったから、クリックは使わずライブ録音という手法をとった。エンジニアの山口州冶さんはこういうのはお手の物で、ヒリヒリとした緊張感の中、ルーム感の効いた適切かつクールな録音をしてくださった。詞の最初のイメージは原発事故や、宗教戦争や、ネット社会の問題点などだった。レゲエやパンクの人間力や反骨精神を、その両者に通ずるいい加減さ(いい意味での)で繋いだような詞になった。否定的な言い方で、実はポジティブ。中盤のダブ・セクションにはレコードノイズをサンプリングして、古いレコードから聴こえる歌みたいな効果をつけている。そこに実際にガラス瓶を割った音を入れてる。ガラスの割れた音に潜む恐怖感と、美しくも危険な破片。問題の定義そのものの危うさを表現した。もともとこんなカオスな精神を爆発させるような曲は好きだから、ライブでやるのが楽しみだ。長い曲だけど、そんなことは、気にしない。

7. レーザー・ライト

2013年の初め頃に作った曲。スタジオに入って、4つ打ちの効いたダンサブルな曲が欲しいとメンバーに話して、バンドでジャムってからできた曲。バンドでジャムることはあっても、そのまま曲を作ってしまうなんて今まではほとんどなかったから、オレの中ではいい刺激になった。オサムがいいギターリフを弾いたのをきっかけに、ケーサクがキックで合わせて、ヤスがベースラインをとって。あとのアレンジも3人にほとんど任せて、その上にオレが歌を付けた。もう一本ギターを入れようかと思ったけど、オサムの考えたギターで充分な気がしたし、潔く一本のギターで攻めた方がカッコいいと思って弾かないことにした。そんなわけでハンドマイクでライブをするようになった。レコーディングする前からよくライブでもやってた曲。サビの「レーザー・ライト」って歌詞は元々は「レイザー・ライト」だった。Razor(カミソリ)でレイザー。「カミソリの刃の光」だったんだけど、歌詞が広げにくくて、レーザービーム、宇宙、円盤、エイリアンといったSFな方に変えた。実際レーザービームのサンプリング音が入っているんだけど、どこに入ってるかわかるだろうか。SSSPとは科学特捜隊のこと。ウルトラマンはオンタイムじゃないけど、エイリアンを追跡するといえば何だろうと考えてたどり着いたワード。あまりに英語が多かったから、初めて横書き表記にした歌詞である。

8. ブラック・チェリー

結構前にできていた曲。2012年の終わり頃だったか。スタジオに入って、なんか「重い」のやってみるかって始めた。今までやったことなかったから。今回のアルバムは自分達が影響を受けた音楽ジャンルにフォーカスを当てていろんなジャンルをその影響がわかるように取り入れていく、というのがコンセプトとしてあった。それをすることで、自分たちをより理解でき、強くすることができると思った。いろんなものに影響を受けて、DOESになっているんだと。ブラック・チェリーはその中でもへヴィーロック、とりわけモダンな感じのへヴィーロックを取り入れようとした。ヤスがそういうの大好きだから、やってみようよってスタジオで作り上げた。オレもハードロックとメタルはかなり通ったから、ダークでへヴィーなのは好物である。イントロでも聴けるテーマになっているギターのアルペジオフレーズを考えてから、構想を練った。ブラック・チェリーは黒い目。なイメージで詞を書いたけど、噂によると怪しい感じのスラングでもブラック・チェリーとあるらしい。州冶さんのミックスでガチガチのモダンへヴィネスにはなっていないところがポイントである。大切な人を守ることを描いた曲。

9. アイスクリーム

アルバムを作るときには、ちょっとした息抜きというか、遊びの曲がよく入る。この曲はアルバムのリリースが夏だから、夏っぽいのを作ったらいいのでは?と意見が出て、スタジオでその場でバンドアレンジしながら作った曲。アルバムのコンセプトが「自分たちの影響を受けた音楽ジャンルをそのままフィーチャーする」だから、最後にぱっと出てきたこの曲にはいろんなジャンルの音楽をこれ見よがしにぶち込んだ。西海岸的スウィングビート、軽いダブ、メロコア、ビーチボーイズ、サーフロック。サビはなんて言ったらいいかわからんけど、ポップな4つ打ち。Vampire WeekendのA-Punkみたいな。夏っぽくいろんなジャンルを入れ込んだらそんな感じになった。歌詞も肩の力の抜けた軽い感じにしようと思って、テーマはわかりやすくビーチ。サーフィン。ナンパ。アイスクリーム。音の仕上がりもいい感じに軽くしてるけど、ライブだと結構重く変わると思う。レコーディングの時、最後にシェーカーを入れたんだけど、ケーサクが出来なくて笑った。ノリがわからんかったらしい。マジでか!ってなったけど、教えたらなんとかうまくいった。逆にいいフックになってる。いろんな形の夏のノリが入った曲。皆さんの夏はどうですか?

10. 君とどこかへ

2013年の初めに作り始めたんだけど、ずっとアレンジが決まらなかった。最初はもっと4つ打ち系のミドルテンポで、ダンサブルな曲だった。それでいてメランコリックでミニマルなアレンジだった。「わすれもの」と同じ時期に作っていたからか、そのメランコリックさが嫌で、ずっと迷っていた。2ヵ月間くらいか?しばらくバンドで合わせているうちに、「もういい!めんどくせー!」ってなって、今までのアレンジを全部捨てて、一からバンドでやり直した。ロックしてやる!って、ギターをジャンジャンジャカジャカってイントロで弾いて、そのまま勢いでストレートなバンドアレンジにした。「バンドなんてこんなもんでいいよなー!」って言いながら、笑いふざけ合ったのを覚えている。結果すごいシンプルでほとんどコード弾きしかしてない。まあ、オレららしいと言えばオレららしい曲だろう。めんどくさいのは嫌いです。でも元がメロウな曲だから、逆にこのストレートで明るいアレンジの方が曲の良さが生きていると思う。悲しい歌を明るい曲に乗せるのは、ポップの常套。DOESは2サビだ、ってよく言われるけど、かなりそれが顕著にわかりやすい曲だと思う。2サビの歌詞は気に入っている。難しい言葉を使わずに、ポップとしての歌詞の作り方をやってみた。何の変哲もないように聴こえる曲かもしれないけど、それはたぶん間違いですw。

11. わすれもの

2012年の冬頃、個人的に一番つらかった時期に作った曲。周りに合わせることと、自分であることの間で揺れ動いて、孤独と戦っていた。クサクサしながら夜道をぶらぶら歩いたり、コンビニで別に欲しくもないものを適当に買ったり。精神的にけっこうまいっていた。そんな気持ちがにじみ出た。この曲を作ってから、自分であること、あるがままであることの大切さに気付いたのかもしれない。アルバムのテーマである「DOESらしさ」を確認しなくてはと思うきっかけになった曲。オサムのギターパートのアレンジはほぼ彼に任せた最初の曲でもある。ここからバンドでアレンジを多くするようになって、オレが昔から欲しかったバンドの形が出来始めた。イントロ、アウトロのフレーズは名フレーズだとオレは思う。レコーディング自体は2013年の春にやっていて、アルバムの中でも一番古い曲。だけど一番最後にミックスして完成した。ミックスし終わった時は、本当にどこかに置き忘れた最後の「わすれもの」を取りに行った感覚だった。1サビでオレが考えたギターフレーズが左に出てきて、2サビでオサムが考えたギターフレーズが右に出てきて、3サビで2つのフレーズが左右で出会う。ミックスでそんな人との出会いや繋がりを表現した。わすれものとは自分の心。あの頃の気持ち。どこかに置き忘れた本当の君の心。

12. 終わりのない歌

騒がしい渋谷の街を離れながらブラブラと。本当に夜道を当てもなく歩いているときに、メロディーと曲のアイデアが浮かんだ曲。たぶん酔っ払ってたと思う。街の雑踏を抜け出して、ひとりでどっかに歩きながら物思いに耽ったんだろう。行った人はわかると思うけど、渋谷の夜はなかなかのもんである。人が多くて、やかましくて、汚くて、かといって都会だという事以外特に面白いところは無くて。その猥雑な感じが人を惹きつけるのかもしれないんだけど。そんなことを思いながら浮かんだ歌のメロディーをiPhoneに鼻歌で録音しておいた。そのまま保留にしてたけど、ずいぶん後で聴いてみたらメロディーにインパクトがあって強かったからちゃんと曲にして、Macでアレンジした。

テンポチェンジしたところの「誰か」と「僕」と「お前」のパンニングをR、L、センターにして、歩きながら自分の脳の中で聞こえてくる声を表現した。ほぼオレがアレンジしてるけど、だからこそ本番の録音の際にはオケをほぼ一発で録音して、バンド感を大事にした。シンプルだからだろうか、自分の中ではなぜか昔懐かしい感じがする曲。ブルーハーツを録音した州冶さんらしさも一番出ている。「終わらない歌」を子供の頃に聴いて、オレは人生が変わった。別にそれをオマージュしたわけじゃないけど(酔っ払ってメロディー思いついてるし)、そんな形而上的な偶然が重なったように思う。終わりのない歌だからこそ、曲順を一番最後に持ってきている。 全てのものには終わりがある。でもそれは悲しいことじゃない。そう思いたい。終わりのない、これからのために。

「最後まで聴いてくれて、読んでくれてありがとう」氏原ワタル

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